規 約 ・ 規 程 例

1.規約・規程の必要性

 組合の基本的事項については、法律及び定款に規定されているが、組合を運営し、各種事業を実際に行っていくためには更に詳細な実施基準が必要となる。

 例えば、総会(総代制を採用している場合は「総代会」も含む。以下同様。)開催のための基本的事項である招集権者、開催予告期間、議長の選任の方法などについては、法律及び定款に規程があるが、そのための事務的処理方法としての総会通知や代理人出席の場合の委任状の様式、提出された白紙委任状の取扱い方、議事録の作成様式及びその保存期間等については、定款等に規程はなく、そのための処理基準の設定が必要となる。

 また、役員である理事、監事の選出、代表理事や専務理事等の役付理事の選出等についても、これらが総会や理事会において選挙制なり選任制によって選出されろことは定款に規定されているものの、選挙のための投票用紙の様式や記入の方法、記入の手順、又は選任のための役員候補者の選出手順についての処理基準、又は選任についてはやはり詳細な規約・規程の設定を待たなければならない。

 このような組合の機関等についての種々の処理基準の設定と同時に組合事務局の設置運営についても規定しておくことが大切である。組合の組織の根幹をなす総会や理事会等についてはごく基本的事項についてだけではあるが、前述のとおり法律や定款に定めがあるため、たとえ実施のための手続き等について詳細を定めた規約がなどがなくても一応運営することに支障はないが、事務局の管理すなわち、事務局機構、職務の分担、職員の就業条件等については法律や定款に定めがないために、その設置なり、運営は専ら規約・規程に委ねられている。

 また、組合運営の中心事項である事業の実施に関しても、規約の制定は重要である。定款には、組合が実施する事業の種類を規定しているが、これだけでは具体的に、どのような内容の事業が、どのような条件のもとに、どのような範囲で実施されるのかがほとんどわからず、具体的な事業別の利用規約が必要となってくる。

 したがって、各種の共同事業実施のための事業利用規約は、組合員にとって最も必要な規約である。このように規約・規程は、組合を運営していくうえで必要欠くべからざるものであり、組合運営に携わる者は、組合を設立したならば直ちに必要な規約・規程を整備しなければならない。いってみれば、必要な規約・規程を設定することは、組合の理事・監事の善管注意義務(注1)や理事の忠実義務(注2)を果たすために不可欠なものといえるのである。したがって、理事は組合を運営するに当たって、まず当該組合にはどのような事項についてどのような規約・規程が必要とされるのかを十分に検討し、すみやかにその設定を行う必要がある。

 組合における規約・規程は、組合の経営を合理的に推進するための基準を示すものであるから、何よりもまず組合の実態に適合したものでなければならない。設定された規約・規程の内容がただ形式に流れ、組合の実態から遊離したものであると、それは実際に遵守されないだけでなく、場合によっては、組合員あるいは事務局職員に無用の拘束を加えるものとして、むしろ有害なものとなってしまう恐れがある。

 組合の根本規範たる定款は、法律そのものに直接根拠をもち、かつ、一定事項の記載が法律によって要求されていて、極めて規範的性格の強いものであるが、その規約・規程は、こうした定款の規定事項に比べてはるかに具体的な細部の事項にわたるものであり、事業の執行方法、機関の運営方法及びこれらの実務上の手続き等を規定するものであるから、組合運営上の具体的基準として実態そのものに即応することが強く要求されてくるものである。すなわち、定款は事実を上から一定の基準にあてはめようとする規範であるのに対し、規約・規程は、定款の規範の範囲内であくまでも事実を基礎としてそれを一定の方向にもっていこうとする基準といえよう。

 なお、IT(情報技術)を活用した組織の運営を可能とするための法改正により、組合運営についても、電子メールなどの電磁的方法による総会における議決権行使、議決権行使の委任、臨時総会招集請求、理事会における理事の議決権行使等が可能となっており、これらを活用していくことを検討すべきであろう。

(注1)善管注意義務: 理事又は監事は、委任の本旨に従い、善良なる管理者の注意を以て委任事務を処理する義務を負う。(中協法第42条の準用による商法第254条第3項が準用する民法第644条、中団法第5条の23第3項、第47条第2項)
(注2)忠実義務: 理事は、法令及び定款の定め並びに総会の議決を遵守し組合の為忠実にその職務を遂行する義務を負う。(中協法第42条の準用による商法第254条ノ3、中団法第5条の23第3項、第47条第2項)

2.規約と規程の区別

 一般に規約・規程といった用語はかなり混同して用いられ、その意味するところも必ずしも同一でない場合が多い。実際には規程とすべきものを規約としたり、規約とすべきものを規程としたりしていることが多い。

 法律上、規約及び規程を区別して使用する理由は、次項に述べるように、規約については、それが総会の議決事項になっている点にある。すなわち、それが規約であるならば法律上必ず総会の議決を経て設定しなければならないし、もしもそれが規約でないならば、その設定は理事会において行ってもよいことになるからである。

 規約とすべき次項については、法律上では、次の5項目を規定している。(中協法第34条、中団法第5条の23第3項、第44条)

 (1) 総会又は総代会に関する規定

 (2) 業務の執行及び会計に関する規定

 (3) 役員に関する規定

 (4) 組合員に関する規定

 (5) その他必要な事項

 組合の根本規則たる定款は、総会の特別議決によるとともに所管行政庁の認可を受ける必要があるが、規約については行政庁の認可を必要としない。規約の内容はあくまでも定款で定められた基本的事項を具体的に実施するための基準ということになる。したがって、規約の設定及び改廃は、組合の業務執行の一つとして、本来的には組合の運営を委任された理事会等が責任をもって行うべきものであるといえるが、しかし、基本的な方針が定款に定められているとはいえ、なおその規定の内容が、組合員の権利義務に関し直接大きな影響を及ぼすような事項については、組合の民主的運営という面からいって、できるだけ組合員の総意のもとに決定運用されるべきであり、その点から法律では規約の設定を、総会の議決事項としているのである。

 すなわち、規約とは、定款同様に組合員を拘束するものであり、換言すれば、組合員を直接拘束するような事項について規定するものを、規約とすべきである。

 このような規約について、なお規定の文字を使用する例も多いが、紛らわしい用語法はできるだけ避けるのが望ましい。したがって、前述のように「業務の執行及び会計に関する事項」のうちでも、例えば組合事務局の職制、職員の就業規則等に関するものについては、規約とせずに規程として取扱い、これを理事会で決定しても何ら差し支えない。

〔規約・規程の異議〕
規 約 規約とは、組合の業務運営及び事務執行に関して、組合員間を規律する自治規範をいい、その設定、変更及び廃止には総会又は総代会の普通議決を必要とする。
規 程 規程とは、組合の事務執行上に必要な関係を規律するものであって直接組合員の権利義務に影響を及ぼすことのない事項に関する内規をいい、その設定、変更及び廃止は理事会で行う。

 

3.規約・規程の設定及び改廃

 組合の意思決定機関には、総会、総代会及び理事会があるが、規約の設定、変更又は廃止については、総会の議決事項であり(中協法第51条第1項、第55条第6項、中団法第5条の23第3項、第47条第2項)、これを理事会等において決定することはできない。

 規約・規程は、組合の運営に必要な事項の基準を定めるものであるから、その設定・改廃は本来的には組合の業務執行、それも対内的業務執行の一部として、理事会が担当すべきものと考えられる(注3)。しかし規約・規程のうち、規約の設定・改廃については、その重要性にかんがみ総会において決定するものであることからこれを除き、専ら規程に属するもののみが本来の組合の業務執行の一部として理事会の議決事項となる。

 総会及び理事会における規約及び規程の設定・改廃についての議決は、それぞれ過半数の出席(定足数)による、出席者の過半数の同意によって行われる。(注4)

(注3)  「組合の業務の執行は、理事会が決する。」(中協法第36条の2、中団法第5条の23第3項、第47条第2項)
(注4)  総会については、法律上定足数の定めはないが、通常、定款により定足数を過半数としている。

 

〔規約・規程の設定・改廃方法〕

4.規約・規程の法的性質

(1) 定款と規約の違い

 規約は、定款と同じように組合の自主的法規といえるが、次のような点において定款と性質を異にしている。

① 規約を設定するかしないかは自由である。
 定款は、組合が存続する限り、これを廃止することは許されないが、規約は、その組合の自由な判断によって変更のみならず廃止することもできる。
② 規約の設定・改廃は、行政庁の認可を必要としない。
 定款を設定・改廃する場合には、必ず行政庁の認可を必要とするが、規約の設定・変更又は廃止には総会の普通議決があれば足り、行政庁の認可を必要としない。
③ 規約は、定款に従属する。
 規約は、定款に比べて相対的に軽微な事項を内容とするものであり、定款に従属する性格をもつものである。従って規約の内容は、法令はもとより当該組合の定款に反するものであってはならない。
④ 規約は、組合設立後に設定してもよい。
 定款は、創立総会において設定されなければならないが、規約は組合設立後の総会において設定されてもよいため、そのようにして設定される場合もある。

 このようにいくつかの点で、規約は定款とその法的性質を異にするとともに、定款との関係においては、定款の補充規定たる性格を有するものであるが、規約もそれがいったん設定された場合には定款同様に全組合員を拘束し、対組合員関係においては定款と同様の法的効力を有することとなる。

(2) 規定の法的性質

 規程という用語は、広い意味では定款及び規約をも含めた意味に用いられることもあるが、狭義では、定款及び規約を除いた場合の細部的規則(内規)を意味する。組合では、前述のように、規約は専ら総会において設定・改廃されるものとされているところからすれば、規程は狭義にこそ使用されるべきである。

 したがって規約・規程を設定する場合には、前述のような区分にしたがって、それぞれの表題をつけるようにすべきである。例えば「役員選挙規程」は「役員選挙規約」と、「共同施設利用規程」は「共同施設利用規約」といったように、それが組合員の権利義務に直接関係する内容をもつものであって、総会の議決を必要とする場合のみ規約とすべきである。

 なお、「規程」と用いられるべきところを「規定」としている事例があるが、「規定」とは、法令、定款、規約、規程に定められた個々の条項の定めを指すものとして、あるいはその定めを設定する意図を表す動詞として用いられる用語であり、一定の目的のために定められた一連の条項の総体を表す「規程」とはまったく異なる意味を有するので注意しなければならない。

 

5.規約・規程の機能

 組合は、特定の事業を行うことを目的とする団体であるから、通常一定の継続的施設をもち、それを基礎として多数の人々が協同して持続的に事業を行い、かつ、その事業遂行のために最も適合すると考えられる一定の組織を構成する。

 こうした組合の組織及び活動についての基本的事項は法律によって枠づけられており、更に個々の組合については定款によって具体化されているが、それ以上の細部にわたる事項については何ら規定することなく、専ら長い間にわたって集積されてきた慣用に基づいて運営されているところが多い。このような習慣としての運営のルールも、それなりに一般化され拘束力をもつものであるが、こうした無意識的、主観的な準則をより合理的なものとするために設定したものが規約・規程である。

 このように規約・規程を設定するということは、組合の事業運営の方針なり基準を客観化し、かつ、これを公開する作用をもつものといえる。そしてこれにより、従来事業担当者が自己の経験や勘で処理してきたものが、単なる個人の勘や経験を脱して一定の客観的ルールに従って行われることになる。このように組合の運営に関する実施基準が客観化され、オープンなものになることにより、一部の者の恣意による組合運営の専断を防止することともなり、より一層組合員全体の利益に合致した運営の確保に役立つことにもなる。

 規約・規程を設定し、組合運営のために必要な諸々の基準を確立することによる効果は、次のようなものが考えられる。

 組合の経営方針を明確に表示し、事業担当者の活動の目標と、その方針の基準が与えられる。
 組合の経営活動における合理性が確保できる。
 組合の経営活動が標準化される。
 組合経営における統制の基準が明示され、これによって組合における内部統制がはじめて可能となる。
 事業実施についての客観的基準が公開されることにより、事業担当者は業務上の運営のための極めて有効な基準をもつことになる。
 組合事業利用に当たっての利用条件等が明確化されることにより、組合員の事業利用が円滑なものとなる。
 組合の運営に関する基準が明示されることにより、組合に対する組合員の権利義務関係が明確となり、事務手続上の混乱を防止することができる。

 

6.規約・規程の態様

 規約・規程は、大きく分けると事業、運営、管理の3つの態様が考えられる。組合の事業(共同生産、共同加工、共同販売、共同金融等)実施のための利用条件に関するもの、組合の意思決定機関たる機関(総会、総代会、理事会等)の運営に関するもの、及び組合活動に必要な事務局等(事務局役員、職印等)の管理に関するもの、などである。これら規約・規程の態様を法令、定款等との関係から体系的に考えてみると、次項の図のようになる。

(1) 組合の事業に関する規約・規程

 組合員の関心が最も深いと思われるのは、組合事業を利用するに当たっての諸条件を定めた各種共同事業に関する規約であろう。事業規約は、単に事業の運営管理の観点からとらえられるだけでなく、個々の組合員がいかに円滑に組合事業を利用できるかといった観点からも設定されなくてはならない。したがって、こうした内容と役割を課せられた事業利用のための規約・規程は、組合員の十分な了解のもとに設定される必要がある。

 組合は一般に、生産、加工、販売、購買、検査、金融、福利厚生、指導教育、情報提供等極めて多岐にわたる事業を実施しているが、これを担当する職員も少なく、その職能の分化も十分に行われていないのが現状であろう。このため組合事業は、これを担当する者の経験や勘によって処理されることが多く、とかく弊害が生じやすい。したがって、組合事業については、合理的管理組織の確立と、その表現としての事業利用に関する規約・規程の設定整備が絶対に必要である。各種事業の特性に応じた規約・規程の設定こそ円滑な事業利用の基本である。

(2) 組合の運営に関する規約・規程

 組合運営に関する基本原則は、定款に盛り込まれているが、更に総会、理事会、その他各種委員会等に関する具体的な基準を定めるのが普通である。総会規約、役員選挙規約、委員会設置規約、理事会規定等である。

(3) 組合の管理に関する規約・規程

 組合管理に関する規約・規程は、組合事務を分業化することにより各単位事務の単純化、能率化を図り、その各々の間に有機的な関連をつけて全体としての統制を確保するためのものであり、①その分業化した組織の全体に関する機構図(相互関係)を明確にし、②この分化した組織にしたがってその各々にどのように組合事務を分掌させるかを規定し、③この各部署に配置された者がどのような責任と権限を有するかを明らかにする。

7.規約・規程作成上の留意点

 規約・規程は定款とは異なり、法令に基づいて必ず設定しなければならないものではないが、一度設定されたときはすべての組合員を義務づける規則として、定款同様の拘束力を有するものである。

 したがって、その作成に当たっては、定款同様明確な用語文章によって作成することが肝要であり、後になってその解釈に分裂が生じるようなものであってはならない。要はいかにして実効ある明確な編成条文にするかであるが、基本的には、次の2点に留意することが必要である。

 「正確な表現」に努めること。
 

 規約・規程は文字・文章などの表現方法を媒介として、これらを通じて確定し、認識され、効力を発揮するものであるから、これらの表現方法の果たす役割は決定的である。作成する者の意図がどのようなものであれ、それが文字・文章を通じて表現される過程で欠陥を生じ、作成する者の意図するところが正確に表現されていなければ、出来上がった規約・規程は、その者の意図にかかわらず別種のものとなってしまう。

 規約・規程の作成に当たる者の第一に心がけなければならないことは、「表現の正確さ」つまり作成しようとする者の意図を最も正確に規約・規程の文字や文章の上に表現し、出来上がった規約・規程を読む人に誤解を生じさせないようにすることである。

 規約・規程の場合、法令と違いかなり具体的な内容を記述するものであるから、抽象的表現を用いる必要もないし、その規制対象も組合員あるいは組合役職員と範囲が特定されているので、正確な表現をすることはそれほど困難なものとはならないであろう。

 「わかりやすい条文」を書くこと。
 

 いうまでもなく規約・規程は、これを作成する者のみが理解、納得すればよいというものではなく、その規約・規程の適用を受け、これに従わなければならない組合員及び役職員がよく理解、納得できるものでなければならないものである。難しい表現を用い、後になって紛議が生じた際に、「総会で組合員全員に諮って同意を得たではないか。」といった強弁による押しつけにならないよう、組合員全員が十分に理解しうるだけの「わかりやすい条文」を心がけるべきである。条文のわかりやすさは、単に文字・文章の使い方だけではなく、その編成上の工夫(編別、見出しの活用等)によっても可能となる。目的規定を置いて、定款とのつながりや、規約・規程の全体の骨子を提示し、定義規定を置いて、あらかじめ使用する用語の概念を明確にしておき、各条文のはじめに見出しをつけて、それぞれの条文の内容を明示するなど、一寸した工夫が同じ内容の規約・規程を難しくもすれば、理解しやすいものにもする。文体を口語体にすることはいうまでもない。

 条文も一つの文章である以上、まずい文章よりもうまい文章であることにこしたことはないが、規約・規程の条文は、文章のうまさまずさより、「正確さ」と「わかりやすさ」こそがより大切である。規約・規程の作成に当たる者は、この点を銘記し、どんな美しい文章であっても不正確でわかりにくい文章では、規約・規程としては何にもならないことを十分に認識すべきである。

 

8.規約・規定の形式

 規約・規程は、対象とする事項ごとに、できるだけ別個に作成することが望ましく、すべての事項について総合的、包括的に「○○組合規約」又は「○○組合規程」といったように設定することは望ましくない。したがって、事業規約ならば各種事業ごとに「○○事業規約」又は「○○事業利用規約」といったように独立した規約・規程を作成すべきである。

 規約・規程の構成は、法令、定款等にならって、一般的総則規定からはじめて、中心的、具体的事項に関する規定を軸に、最後に補足的、補充的規定で終えることになる。

 また、各条文は、同一事項に関するもののみでまとめ、一つの条文に異なった内容のものを併合させることのないように注意しなければならない。また、編、章、節、款を設けた場合は、各編、章、節、款ごとに題名をつけ、それぞれの内容が一目見て判断できるようにし、各条文にもそれぞれ見出しをつけて、理解、納得のためだけでなく、索引にも便利になるようにすることと、文書化に当たっては、横書きにするのが望ましい。

(1) 題 名

 規約・規定の題名は、その内容を簡潔にしかも的確に示すものでなければならない。その場合、題名と併せて、主題部右上にその規約・規程が設定あるいは変更された年月日を必ず明記することが望ましい。題名は4字目から書き出し、それが2行以上にわたるときは1行目と初字をそろえる(記載例1)。

(2) 目 次

 規約・規程について章、節等の区分をした場合には、必ず題名のすぐ次にその章節等の目次をつけるのが望ましい。目次には、目次の章名(章を更に節、款等に小区分したときには、その最小単位の節名、款名等)の次にその章、節、款等に属する条文の範囲を(第○条~第○条)というように、かっこ書きして記載する。その章、節、款等に属する条文が一つしかない場合はもちろんその1条だけを掲げ、条文が2つだけの場合には(第○条・第○条)というように「・」でその間をつないで書く。付則については、それが条になっている場合でも、項に分かれている場合でも、それらの条文を示すかっこ書きはつけなくてよい(記載例1)。


[記載例1]  
□□□共同生産事業  
□□□規約 平成○年○月○日制定
  平成○年○月○日改正

目  次

□第1章□総 則(第1条・第2条)

□第2章□施設の管理(第3条~第11条)

□第3章□利用方法(第12条~第25条)

□第4章□雑 則(第26条~第28条)

□付 則

□□□第1章□総 則

 

(3) 章、節等の区分と配字

 規約・規程の条文数が相当に多く、かなり長いものとなる場合には、これを「第1章○○」、「第2章○○」というように内容の共通する条文を何ヵ条かずつにまとめて章にするのがよい。もし章の区分だけでは足りず、更に細分する必要がある場合には「節」、節を更に細分化する場合には「款」、款を更に細分化する場合には「目」に区分する。なお、法令などでは、大法典になると章の上に「編」といった大区分が置かれることがあるが、組合の規約・規程については、このような大区分の必要はほとんどないし、また小区分の方もせいぜい章、節の区分にとどまり、款、目までの細分は必要ないであろう。

 このように規約・規程の条文をいくつかの章、節等に区分した場合、それらの配字は次のようにする(記載例2)。まず「章」は、「第1章○○」という字句の第1字(事例の場合は「第」)を初字の4字目から書き出す。「第○節」という場合にはこれより1字下がって5字目から、「款」は更に1字下がって6字目から、「目」は更に下がって7字目からそれぞれ書き出す。あまり用いることはないが、「第○編」という場合は、章より1字上がって第3字目から書き出す。なお、このような章、節の区分は、本則についてのみ行われ、付則をこのような章、節等に区分することはしない。

 各条文は第1字目から書き始める。項、号については、第1項には特に項数を示すための数字をつける必要はなく、条文の字句の後に1字をあけて2字目から書き始めればよい。第2項以下は、その項数を示す数字(2,3・・・・・・)を第1字目に置き、以下1字あけて3字目から本文を書き始める。号の場合は、その号数を示す数字をかっこ書きして((1)、(2)・・・・・・)、第2字目から書き始める。本文はいずれも1字あけて書き出し、2行以上にわたるときは2字目から書き始めるばよい。

 句読点については、各条文の終わりに句点「。」をつけるが、号の場合には、終わりの字句が名詞形で終わるときには句点をつけない。ただし、最後の字句が「・・・・・・すること」、「・・・・・・するとき」で終わる場合や名詞形の字句の後に更にただし書き等の文章が続く場合、動詞系で終わる場合等には句点をつける。なお読点「、」については、条文によっては後にくる文章との関連で、どのように続くかにより、その結果に重大な相違をもたらすこととなることも考えられるので、その使用は慎重にすること。


〔記載例2〕

□□□第1章□総 則

□□□□第1節□通 則

□□□□□第1款□事 業

(目  的)

第1条□この規約は、本組合が定款第○条第○号に掲げる事業(以下「共同購買事業」とい

□う。)を行うに必要な手続、方法その他の事項について定め、もって共同購買事業の円滑な

□運営を図ることを目的とする。

(購買品目)

第2条□本組合は、次に掲げるものを共同購買する。

□(1)□○○○○

□(2)□○○○○

(供給品及び委託品)

第3条□前条第○号に掲げるものは、本組合であらかじめ購買し、組合員の申込みに応じて供

□給する(以下「供給品」という。)。

2□前条第○号に掲げるものは、組合員の委託により購買し、供給する(以下「委託品」とい

□う。)。


(4) 見出し

 法令、定款と同様に組合の規約・規程についても、その各条文に見出しをつけることが望ましい。そうすると規約・規程の理解を容易にし、必要な条文の検索引用に便利である。見出しは、各条文ごとにつけるのが普通であるが、連続する2つ以上の条文が、同じ部門に属する事項を規定している場合には、その数ヵ条をまとめてその一番はじめの条文に見出しをつけることもある。この場合の見出しは、その直後の1条に付着しているものではなく、その数ヵ条に付着するものだと考えられており、このことは見出しを改廃する場合に1条ごとの見出しの場合と若干異なった取扱いとなる。

 見出しは、その条文に規定している内容を最も簡潔に要約して掲げることが必要である。各条文の要点を短い言葉に要約することは、なかなか容易なことではなく、技術的に困難な場合も少なくないが、簡明な見出しの表示は、あとで利用する場合に便利であり、その価値は大きい。見出しは、検索の便という点から考えて、それぞれの条文の左上にかっこ書きしてつけ、第1字目から書き始める(記載例3)。

 なお、条文改正に当たって見出しを改正する場合には、改正する旨の文章に「見出し(○○○○○)を」と特にことわる必要はなく、単に当該条文について「第○条を」とすればよい。もっとも条文はそのままに、見出しだけを削ったり追加したりする場合には、その旨を特記しなければならない。


〔記載例3〕

(目  的)

第1条□この規約は、本組合が定款第○条第○号に掲げる事業(以下「共同購買事業」とい

□う。)を行うために必要な手続、方法その他の事項について定め、もって共同購買事業の円

□滑な運営を図ることを目的とする。


(5) 本則と付則

 規約・規程も厳密には本則と付則とで構成される。本則とは、付則以外の部分のことであって、規約・規程の本体的部分をなすものである。付則とは、この本則に付随して、規約・規程の施行期日、その規約・規程の適用関係、既存の規律関係と本則に定められた新しい規律関係との間の結びつきとが調整の関係、既存の他の規約・規程でその新しい規約・規程と矛盾抵触するものを直すための既存の規約・規程の改廃措置等を定める付帯的部分のことである。このような付則の部分は、本則と区別して、そのはじめに必ず「付則」という表示をして、そこから付則になることを明らかにする。付則を本則と通じて章節等の区分で処理することは許されない。付則という文字の書き方は、第4字目に「付」の字を置き、1字あけて「則」の字を書くこととする(記載例4)。

 本則の部分については、どこが本則であるかを示す表示はしないが、第1条から付則という表示のある直前までが本則である。このように本則という表示はないが本則という概念はあるから、付則や他の規約・規程で本則の部分を「本則第○条」というように引用することは差し支えない。なお、「付則」区別すべきものに「補足」があるが、これは本則中の補充的規定あるいは雑則的規定を定める部分の章、節等の標題として用いられる。

 付則の条項については、規定の内容が相当に複雑な場合はともかく、それが比較的簡単な場合は「条」に区分せず、「項」だけに区分して書けばよい。なお、「条」に分ける場合に、本則と通しの条名をつけるやり方(この方法によれば本則が第31条までで終わっているときの付則の第1条は、第32条となる。)と、付則は付則で「第1条」、「第2条」というように新しく条名を起していくやり方とあるが、付則と本則の差異を明確にする点から考えて、後者の方が適当である。


〔記載例4〕

□□□付□則

1□本規約は、平成○年○月○日から施行する。

2□本規約の施行により、平成○年○月○日施行の共同購買事業規約は、平成○年○月○

□日をもってその効力を失う。


(6) 条・項・号

 組合の規約・規程の条文は、その内容が極めて簡単で「条」に分けるまでも内場合を除き、通例「第1条」、「第2条」と条に区分する。1つの条の中で区切りをつける必要のある場合は、別行を起こして次を書き出す。この条の中で、別行で区分される段落を、「項」という。しかし、1つの条の中に項が数多くある場合は、「項」が第何項に当たるかを調べるのに手間がかかるから、第2項以下の項の頭に算用数字で2,3,4と項番号をつけて、その項が第何項に当たるかがすぐわかるようにする。

 ただし、この項番号は、あくまでも項の順番を探し出すための便宜のためにつけるものであるから、項のうちの第1項に当たる部分には、「1」という項番号はつけないことになっている。

 条、項の中で、いくつかの事項を列記的に並べて規定する必要のある場合は、(1)、(2)、(3)、(4)というように、かっこ書きした番号をつけて列記するが、これを「号」という。号の数字は、上記のようにかっこでくくって、条の第1字目から1字下りに配字する。

 号を更にいくつかの列記事項に細分化する必要のある場合は、イ、ロ、ハ等に区分して列記する。


〔記載例5〕

(施  設)

第2条□本規約の目的となる共同施設は、次のものをいう。

□(1)□共同保管倉庫

□(2)□共同駐車場

□(3)□○○○○

□□イ□○○○○

□□ロ□○○○○


(7) 用 字

 組合の規約・規程に使用する用字については、昭和56年10月1日付内閣訓令第1号「常用漢字表の実施について」が定められたことに伴い、次のような基準によるのが望ましい。

 使用する文字は、「常用漢字表」(昭和56年10月1日内閣告示第1号)の本表及び付表によること。なお、字体については、通用字体を用いること。
 「常用漢字表」の本表に掲げる音訓によって語を書き表すにあたっては、次の事項に留意すること。
 

イ.次のような副詞及び連体詞は、原則として漢字で書くこと。

(例) 

必ず 少し 既に 直ちに 甚だ 再び 全く 最も 専ら 余り

至って 大いに 恐らく 必ずしも 辛うじて 極めて 殊に 更に

少なくとも 絶えず 互いに 例えば 次いで 努めて 常に 初めて

果たして 割に

ただし、次のような副詞は、原則として仮名で書くこと。

(例) 

おって かつ したがって ただし ゆえに ところが ところで また

ただし、次の語は、原則として漢字で書くこと。

(例) 

及び 並びに 又は 若しくは

 仮名遣いは、原則として「現代仮名遣い」(昭和61年7月1日内閣告示第1号)によること。

 送り仮名は、原則として「送り仮名の付け方」(昭和48年6月18日内閣告示第2号)によること。

 規約・規程を作成する場合は、単に「わかればよい」ということではなしに、上に示したような基準にしたがって規約・規程全体の体裁を整えるように努力すべきである。しかし、それぞれの業種に特殊な専門用語や技術用語については、それらをすべて上記の基準に当てはめて使用することは難しく、無理に他の用字に置き換えては、かえってその意味が不明瞭なものになることがあろう。したがって、そのような場合は、例外的にせよ上記基準外の用字を使用しても差し支えない。また同意語や似た意味のいくつかの用語例のあるものは、できるだけこれを整理統一して使用することも肝要である。

 

(8) 用 語

 法令用語には、特殊な言いまわしが用いられることがあり、規約・規程においても、そうした用語法を用いることがあるので、通常使用されると考えられるいくつかについて、以下にその意味を明らかにする。

① 「……ものとする。」

 一定の方針を示すために用いる。この表現には「……しなければならない。」という義務づけがないわけではなく、時によってはこれと全く同義語として使われることもある(「弁明する機会を与えるものとする。」)が、一般的にはある種の含みをもたせつつ、原則とか方針を示すという意味が強い場合に多く用いられる。(「持分の算定に当たっては、10円未満の端数は切り捨てるものとする。」)

 

② 「……とする。」

 特定の効力を与えるために用いる(「役員の任期は、次のとおりとする。」)。例えば中協法第4条において「組合は、法人とする。」という場合、この規定の意味は「組合に、法人としての法律上の人格を与える。」ということであり、ここでの「……とする。」という用語は、特定の効力(法人格)を与えるという含みをもった説明語として用いられている。このように「…とする。」という用語は、創設的意味をもつものであり、単なる事実の説明に止まる「……である。」という表現とは異なる意味をもっている。

 

③ 「……することができる。」

 一定の者に、特定の行為をすることができる権能を与える旨を示す用語であり(「組合員は、90日前までに予告し、事業年度の終わりにおいて脱退することができる。」)、その機能(この事例の場合は脱退という権能)を行使するか否かはその者の裁量に委ねられる。「…する。」が、その者の意思いかんにかかわりなく、特定の効果を発生させる(「組合員は、左の事由によって脱退する。」)ために用いられるのとは異なる。

 

④ 「この限りでない。」

 この表現は、「ただし、……この限りでない。」というように、ただし書きの述語として、本文の規定の除外例を示すために用いられる(「加入の承諾を得た者は、遅滞なくその引き受けようとする出資の全額の払込みをしなければならない。ただし、持分の全部又は一部を承継することによる場合は、この限りでない。」)

 この表現を用いる場合は、どのような意味で「ただし、……この限りでない。」なのか、解釈適用上誤解の生じないように、主条文の適用規定及びその条件を明示しなければならない。なお、この表現は、単に消極的にその前に出てくる規定又は文章を打ち消すだけのものであって、それ以上に積極的に何か新しいことをいうものではない。したがって、その用い方に注意しないと、「この限りでない。」という用語で打ち消された後のことがらについて、条文のいわんとするところがあいまいになる可能性がでてくる恐れがある。

 

⑤ 「……妨げない。」

 「妨げない。」又は「妨げるものではない。」という言葉は、あることがらについてAという規定が設けられた結果、そのことがらについて本来適用されていた、他のBという制度や規約の規定が排除されることになったのか、それとも依然として適用されるのか若干疑問があるという場合に、依然として当該のBという制度となり、また規約の規定なりが、そのことがらについて適用されるのだということを表すのに用いられる。この用語も消極的に、ある制度又は規定の適用があってもよいということをいってるだけで、積極的に、こうでなければならないということを表すほどの意味はない(「現物出資者は、第1回の払込の期日に、出資の目的たる財産の全部を給付しなければならない。ただし、登記、登録、その他の権利の設定又は移転をもって第三者に対抗するため必要な行為は、組合成立の後にすることを妨げない。」)

 

⑥ 「……を準用する。」

 「準用する。」とは、特定の事項について定められている規定を、その事項とは性格の異なる他の事項について適用するということで、場合によってはもとになる規定の一部に修正を加えた上で、準用することもある。しかし、組合の規約・規定においては、当該規約の理解を容易にし、解釈上の疑義を避けるためにも、ある程度の重複はいとわずに、できるだけ条文の準用は避け、同一内容の条文であっても、改めて規定する方がよいであろう。

 

⑦ 「……の例による。」

 この表現は、ある特定の事項について定められている規定の内容を、そのまま他の場合に当てはめて適用するというときに用いるもので、「……を準用する。」とほぼ同意義である。

 ただ「準用」と異なる点は、「準用」の場合には、そこに示された規定のみが対象となるのに対し、「……の例による。」の場合には、そこに示されている一定の手続なり事項なりが包括的に、その場合に当てはめられて適用されるということである。

 

⑧ 「及び」と「並びに」

 A・B二つの名詞などがある場合にこれを併合的に並列する場合は、AとBの間に「及び」をおいて用い(A及びB)、三つ以上の併合的意味をもつ名詞などを、同一の意味の叙述において並列するときには、並べられた名詞的語句のうち最後の語句だけを「及び」で結び、その前におかれる語句は読点「、」でつなぐ(A、B、C及びD)。更に、並列される語句の間に段階のある複雑な文章では、大きな意味の併合的連結には「並び」を、その大きな意味にまとめられた中で並列されている語句のつなぎには「及び」を用いる(「A及び並びに甲及び乙、「理事及び監事」、「理事長、副理事長及び専務理事」、「可決、否決の別及び賛否の議決権並びに賛成した理事の氏名」、「会議の目的たる事項及びその内容並びに日時及び場所を記載した書面」)。

 

⑨ 「又は」と「及び」

 「又は」と「及び」では、前者が選択的接続詞であり、後者は併合的接続詞であって、両者の意味が異なることはいうまでもないが、実際に使用しようとする場合、そのどちらを使用すべきが迷うことが多い。まず英語の「and、(or)」に当たる場合、すなわち「又は」と「及び」の両方の意味を与えようという場合には、原則として「又は」が用いられる。次に、AもBもCのことをしてはならないという場合に、「A及びB」と書くか、「A又はB」と書くかは、結局は語感によって決するほかはないが、AとBを抽象的、包括的にとらえようとする場合は「A又はB」ではなく「A及びBはCのことをしてはならない。」とする例の方が多いようである。特に「AもBもC又はDのことをしてはならない。」という場合は本来、

という関係であるが、この場合に「A又はBは、C又はDのことをしてはならない。」とすると、「AはCのことをしてはならないし、BはDのことをしてはならない。」という、

の関係にとられるおそれがある。そこで前者のような関係を規定したい場合には「A及びBは、C又はDのことをしてはならない。」とする方が適当となる。

 

⑩ 「又は」と「若しくは」

 これらの接続詞は、AとBを選択的に並列させようとする場合に用いるが、両者の違いは「及び」と「並びに」の関係と同じように、並列させようとする字句の間に段階があり、その大きな語群を選択的に連結する場合には「又は」を、その大きな語群の中の小さな選択の時には「若しくは」を用いる(「法又は定款」、「事業の全部又は一部を休止し、若しくは廃止したとき」)。なお、選択的連結法が二段階以上になるときは、小さな連結である「若しくは」を重複して用いるが、併合的連結の場合は、大きな連結である「並びに」を重複して用いる(「組合の事業の範囲外において、貸付をし、手形の割引をし、若しくは預金若しくは定期積立の受入れをし、又は投機取引のための組合の財産を処分したとき」)。

 

⑪ 「あるとき」と「かつ」

 上記の他に条文等において使用されると思われる接続詞に、「あるいは」という用語があるが、これの用法は必ずしも一定しておらず、「若しくは」と「又は」で表現できない大きな選択的連結を、表現するために用いられることもあるが、一般的にはあまり用いられないようである。なお、その他にも併合的連結の用をなすものに「かつ」という用語がある。これは明確な意味をもって用いられ、(「及び」、「並びに」と類似した意味でも用いられることがあるが)、A、B2つの連結される語が、互いに密接不可分であって、2つの語を一体として、はじめてある意味が完全に表されるというような場合に、その後の語感から「かつ」が用いられる。また、主として「かつ」の前後の2つの語句の連結に重点がおかれる場合にも用いられる(「資本の額又は出資の総額が1億円を超え、かつ常時使用する従業員の数が3百人を超えたとき」)。

 その他にも接続詞が多々あるが、ここでは組合で使用される度合いの多いと思われるものにとどめることとする。

 

⑫ 「者」、「物」及び「もの」

 これらの用語の用い方としては、まず「次に掲げる者」、「該当する者」などのように、法律上の人格を有するもの(自然人及び法人)を対象とする場合に「者」を用いる。

 次に「物」は、「者」すなわち人格のある者を除いた、いわゆる有体物を総括する語である。

 「もの」は、者又は物では表現できない抽象的なものを表す場合及び人格なき社団等を表現する場合に用いられる。ある特定の者又は物を限定的に説明する際に、例えば「何々である者であって何々に該当するもの」のように用いる。

 

⑬ 「場合」、「時」及び「とき」

 「場合」は、「疾病により欠勤3日を超える場合」とか、「前条の示す場合」などのように、仮定的条件又は既に規定された事例を引用して、包括的条件を示すものとして用いられる。

 「時」は、ある時点を瞬間的にとらえて表現する場合、例えば「……を受領した時、効力を発する。」というような場合に用いられる。

 「とき」は、不特定の時などにあらわし、「場合」と類似した意味にも用いられる。

 「とき」と「場合」を同一条文内に用いて条件をあらわす際には、大きな前提条件を「場合」、小さな前提条件を「とき」で示す。(「組合は、前項の請求がある場合において、変更の必要があると認めたときは」)。

 

⑭ 「推定する。」と「みなす。」

 これらの用語の用い方は、当事者間に取り決めのない場合とか反対の証拠がない場合に、ある事実について、定款、規約・規程自らが一応「かくであろう。」という判断を下す場合が「推定する。」であって、異なるものを他のものと認定してしまう場合は「みなす。」を用いる(「債権者が、前条第2項の一定の期間内に意義を申し出なかったときは、○○の金額の減少を承認したものとみなす。」)。

 

⑮ 「以上、以下」と「未満、超」

 「以上、以下」の用法としては、例えば「10万円以上」とか、「50万円以下」あるいは「9月1日以前1ヵ月」とか「公布の日以後」というように数量的又は時間的比較をする場合に、「以」の字をつけて表現すると、起算点になる数量なり日時なりを含むことになる。すなわち「10万円以上」は、10万円を含み、「9月1日以前」といえば、9月1日を含むことになる。

 逆に起算点を含まないように表現するには、「10万円を超える金額」、「50万円に満たない金額」あるいは「9月1日前1ヵ月」とか「公布の日の後10日」という表現をする。これらの場合、「10万円を超える金額」には、10万円は含まれないし、「10万円に満たない金額」にも、10万円は含まれない。

 

(9) 期間計算

 規約・規程において期間の定めをした場合に、特にその期間についての計算方法を定めなければ、一般的な計算の方法として民法に規定される通則にしたがうことになる(民法第138条~第143条)。

 時をもって定める場合
   この場合には、期間は即時から起算し(民法第139条)、所定の期間の終わった時点を以て終了する。例えば、「午前9時から3時間」と定めたときは、その3時間の期間は午前12時に終わる。
 日、週、月、年をもって定める場合
 

 この場合には、特約しない限り日の端数を加えない。すなわち、期間の初日は算入しないで翌日から起算し(民法第140条)、末日の終了をもって期間は満了する。したがって、「引渡しの日から6日間」と規定されていた場合のその期間は現に引渡した日(例えば7月10日)は計算に入れず、7日目(16日)の午後12時に満了したことになる。このことから、初日も算入したい場合には、その旨を判然と明文化しておかなければならない。

 月又は年で期間を定めるときは、月の大小や年の平均を無視して暦にしたがって計算し、最後の月又は年において起算日に応答する日を定め、その応答日の前日を末日とする(民法第143条)。すなわち、前例の場合「引渡しの日から5ヶ月間」といえば起算日である7月11日の属する7月から数えて5ヵ月目の12月の応答日である12月11日がその日に当たり、満期日は、その前日の12月10日ということになる。この場合は、その間にある月の大小は一切考慮に入れなくてもよい。

 なお、最後の月の応答日がないときは、最後の月の末日を満期日とする。例えば、起算日が9月30日で、それから5ヵ月という場合は、5ヵ月目である翌年の2月30日が、最後の月の応答日となるが、この場合応答日は存在しないのでその月の末日すなわち2月28日あるいは29日がその満期日となる。

 また期間の末日が祭日、日曜日その他の休日に当たり、その日に取引をしない慣習があるときは、その翌日を満期日とする(民法第142条)。したがって、国民の祝日や正月三箇日の休日などが満期日となるときは、その満期日は、これらの休日の翌日まで延長されることになる。

徳島県中小企業団体中央会

〒770-8550
徳島県徳島市南末広町5番8-8号
徳島経済産業会館 KIZUNAプラザ 3階

TEL:088-654-4431 FAX:088-625-7059

中央会周辺地図はこちら